この記事では、採卵当日の流れをできるだけ詳しく書く。「実際どんな感じなの?」という疑問に、経験者として答えたい。

まず読む前に、保険適用について知っておいてほしいことがある。これを知らずに進めると、せっかくの権利を使い損ねる可能性があるからだ。

保険適用のしくみと年齢の話

体外受精は、条件を満たせば保険適用で受けられる。ただし、この「条件を満たす」までの道のりに時間がかかる。

  • 決められた検査をすべて受ける:ホルモン検査・超音波・AMHなど。私は17回通院、約3ヶ月半かかった。
  • 一般不妊治療を行う:年齢や状態により異なるが、私の場合は人工授精を2回。それでも妊娠しなかったため、体外受精へステップアップした。
  • 体外受精へ:ここまでくるのに、最低でも半年〜1年はかかると思っておく方がよい。
保険適用の年齢・回数(制度)
体外受精・顕微授精などの保険適用は、治療開始時の女性の年齢が43歳未満が対象です。回数は、40歳未満は1子ごとに胚移植6回まで、40歳以上43歳未満は1子ごとに胚移植3回までと定められています。
年齢について、これだけは伝えたい。40歳未満で受けられる回数を活かすには、検査・一般不妊治療にかかる期間を逆算して、早めに初診を済ませておくことが大切だと感じました。妊活を考え始めたら、早めに動くことが何より大切です。(※適した進め方は人それぞれです。必ず担当医にご相談ください。)

採卵周期のスケジュール(私の場合)

採卵は生理が来てから動き始める。ざっくりとした流れはこうだった。お世話になったのはOKAレディースクリニック(長野県)

  • 1/4:生理後、受診。スケジュールの大枠を決める。次の予約はその場で先生が、患者の都合も相談しながら決めてくれる。
  • 1/15:薬・自己注射の日程を決定。看護師さんから自己注射の方法を丁寧に説明してもらえる。この日から毎日、決まった時間に飲み薬を服用。
  • 1/20:超音波・採血・診察。卵の育ち具合を確認する。
  • 1/22:採卵前日。点鼻薬を自宅で使用。注射・飲み薬も継続。
  • 1/23:採卵当日。

採卵当日の院内での流れ

採卵当日は、朝いちばんに夫の精子を採取してもらう必要がある。採取用のカップは、自己注射の説明と同じタイミングで事前に渡してもらえる。

  • 6:30 到着:開院前のため玄関は閉まっている。インターフォンを押すと看護師さんが出てきてくれる。
  • 受付・本人確認(約15分):診察券のIDを確認。夫の精子を預け、書類にサインをする。
  • 個室で着替え(約10分):処置エリアの個室に案内され、処置用の服に着替える。
  • 処置室へ:ベッドに横たわり、洗浄・座薬・点滴をしてもらい、先生を待つ。
  • 採卵:超音波で卵の状態を確認(患者にも見えるモニターがある)。針を刺す瞬間はチクっとする程度。採卵した卵は、別室の培養士さんがその場で受け取りにくる。
  • 結果を聞く:処置が終わり、そのまま処置室で採卵数を教えてもらえた。この日は2個。
  • 個室で休憩(約2時間):点滴をつけたまま個室のベッドへ。看護師さんが何度か様子を見にきてくれる。助成金の案内や帰宅後の注意事項の紙も渡された。
  • 診察・次回予約:ロビーで待つとすぐに診察。採卵の状態を確認し、次回来院日を決める。
  • 帰宅:採卵当日は自分で運転して帰れない。行きは夫に送ってもらい、帰りはバスで帰宅した。
処置室に入るまでは意外と落ち着いていた。でも採卵の直前、さすがに緊張した。無麻酔と事前に説明を受けていたので、どのくらい痛いのかが読めなかったからだ。実際は「チクっ」という程度で、思っていたより全然大丈夫だった。この体験が、2回目以降も同じクリニックにお願いする決め手になった。

今回使った薬と手法(PPOS法)

今回はゴナールエフ+PPOS法というプロトコルで採卵を行った。PPOS法とは、黄体ホルモン(プロゲステロン)を使って排卵を抑制しながら卵を育てる方法だ。

  • ゴナールエフ(自己注射):ペン型で使いやすかった。時間が厳密に決まっていないので、忘れないよう毎日ほぼ同じ時間に打っていた。
  • デュファストン(飲み薬):8時と20時の服用と決まっていたので、アラームをセットして飲み忘れを防いだ。
  • ブセレリン点鼻薬(採卵前日):排卵を促すトリガーとなる薬。21時・21時15分と時間が指定されており、タイミングがとても大切だった。
薬の種類・量・タイミングは、一人ひとりの体の状態に合わせて医師が決めるものです。ここで紹介しているのはあくまで一例で、すべての人に当てはまるわけではありません。

採卵後の身体——お腹の張りと2日間の休み

採卵翌日から3〜4日ほど、お腹が張ったような感覚があった。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の軽い症状が出ることがある、と事前に説明を受けていたので、慌てはしなかった。

病院からは「体重を毎日測って変化を確認するように」と言われていた。少し増えたタイミングで看護師さんに電話で相談したところ、「許容範囲内なので、安静にして様子を見てください」とのことだった。

採卵後に体重を測るよう言われるのは、水分が腹腔内にたまっていないかを確認するため。急激に増える場合は受診が必要になることもあります。私の場合は問題ない範囲で、自宅で安静にし、会社は2日間休みました。
採卵に伴うリスクについて
採卵では、感染・腹痛・卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などが起こることがあります。強い痛み、発熱、出血、急な体重増加などがある場合は、自己判断せずクリニックに連絡してください。

採卵から6日後。培養結果を聞きに行った

採卵から6日後の2月2日、結果を聞きに病院へ向かった。採卵した卵が2個、その後どうなったのか。正直、不安と期待が入り混じっていた。先生から告げられた結果はこうだ。

項目結果備考
採卵数2個(未成熟卵)採卵当日に判明
成熟卵2個培養士さんの手で成熟卵に
受精方法顕微授精当日に先生が判断
胚盤胞1個(グレード4BC)凍結保存へ

顕微授精になったのは、当日に決まったこと

実は、顕微授精は最初から決めていたわけではない。採卵当日、先生から「卵の数が少ないこと、精子の量と運動率を考慮して、顕微授精で進めます」と告げられた。その場での判断だった。

顕微授精とは、1つの精子を卵に直接注入して受精させる方法だ。卵の数が少ない場合や、精子の状態が思わしくない場合に選択されることが多い。

未成熟卵が2個——そう聞いたとき、正直不安だった。でも結果を聞きに行ったら、培養士さんの手によって2個とも成熟卵になっていた。さすがだと思った。胚盤胞が1個できたこと、それだけでとにかく安堵した。

グレード4BCとは何か

胚盤胞のグレードは「数字+アルファベット2文字」で表される。私の胚盤胞は「4BC」だった。

  • 数字(1〜6):胚盤胞の発育段階。4は十分に育った「胚盤胞」の段階。
  • 1文字目(A〜C):内細胞塊(赤ちゃんになる部分)の評価。
  • 2文字目(A〜C):栄養外胚葉(胎盤になる部分)の評価。Aが最も良く、Cになるほど評価が下がる。

先生からは「BやCがつくと着床が難しい場合もある。できればもう少しグレードの高い卵で移植したい」と言われた。4BCでも移植はできる。でもアドバイスを受けて、この胚盤胞は凍結保存し、次はもう一度採卵してみることに決めた。

移植か、もう一度採卵か。迷った末の決断

正直、迷った。せっかく1個できた胚盤胞をすぐ移植したい気持ちもあった。でも先生の言葉が引っかかった。「もう少しグレードの高い卵で移植したい」。

理系の性格もあって、確率の話は素直に受け止めた。グレードが高い胚盤胞の方が、一般的には移植後の成績が期待しやすいなら、もう一度採卵して選択肢を増やした方がいい。4BCの胚盤胞は凍結しておけば、いつでも使える。次も採卵で進めることに決めた。

移植するか、もう一度採卵するかの判断は、年齢・卵の状態・本人の希望などによって変わります。これは私の選択の一例です。方針は必ず担当医と相談して決めてください。

かかった費用のまとめ

採卵・顕微授精・培養・凍結とすべてがこの一連に集約されるため、費用は大きくなる。それでも保険適用があることで、自費だった場合と比べて負担は大きく軽減されている。

内容区分金額
採卵当日保険適用20,900円
顕微授精・培養・凍結ほか(2/2 結果確認日)保険適用86,620円
合計107,520円

※上記の金額は薬剤代を除いた費用です。

これまでで一番高い会計だった。それでも、保険適用の存在は本当に大きい。費用の全体像を知りたい方は、体外受精の費用と保険適用を徹底解説もあわせてどうぞ。