体外受精には、基本の採卵・受精・移植に加えて、さまざまな追加の技術・検査オプションがあります。「タイムラプス」「PRP療法」「PICSI」もそのひとつです。

この記事では3つのオプションの仕組み・費用・先進医療の有無・どんな方に検討されるかを解説します。

① 3つのひと目でわかる違い

タイムラプス
⏱ タイムラプス
培養中の受精卵を取り出さずに24時間連続で観察・記録できる培養技術。胚を培養器外に出す回数を減らし、培養環境の変化を抑えながら発育を確認できる
先進医療あり
技術料目安:約5〜7万円
PRP療法
💉 PRP療法
自分の血液から多血小板血漿(PRP)を作り、子宮内膜や卵巣に注入する治療。薄い子宮内膜・低卵巣予備能などに対して検討されることがある
自由診療のみ
費用目安:約10〜30万円(自費)
PICSI
🔬 PICSI
ヒアルロン酸に結合する性質を持つ成熟した精子を選んで顕微授精に使用する技術。精子の選別精度を高めることが目的
先進医療あり
技術料目安:約2〜5万円
💡 3つとも体外受精・顕微授精と組み合わせて使うオプションです。単独で使うものではなく、採卵・移植などの基本治療に追加する形で検討されます。

② タイムラプスとは

⏱ タイムラプス培養のポイント
  • 培養器の中に小型カメラを内蔵し、受精卵を取り出さずに連続して撮影・観察する技術
  • 従来の培養では定期的に培養器から出して顕微鏡で確認していたが、その度に温度・CO₂濃度などの環境変化が生じていた
  • タイムラプスでは環境変化を最小限に抑えながら、受精卵の分割の速さ・均一性などの発育動態を確認できる
  • 撮影データをもとに、より良好な胚を選ぶ参考情報として活用される
  • AIによる胚評価システムと組み合わせて使うクリニックも増えている

先進医療としての位置づけ

厚労省の先進医療名は「タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養」です。届け出を行ったクリニックでは、採卵・移植などは保険適用のまま、タイムラプスの技術料のみを自費で支払う形で受けられます。

対応していないクリニックでは自由診療扱いになる場合があります。受診前に先進医療として届け出ているか確認することをおすすめします。

③ PRP療法とは

💉 PRP療法のポイント
  • PRP(多血小板血漿)は、自分の血液を採取して遠心分離し、血小板を高濃度に集めた成分
  • 血小板には組織の修復・再生を促す成長因子が含まれており、その作用を不妊治療に応用した治療法
  • 不妊治療では主に「子宮内膜PRP」と「卵巣PRP(PRP卵巣注射)」の2種類が行われることがある
  • 自分の血液を使うため、アレルギー反応が起きにくいとされている

子宮内膜PRPとは

  • 子宮内膜が薄く(一般的に7mm未満とされる場合も)、胚が着床しにくい状態の方に対して検討されることがある
  • PRPを子宮内に注入することで、内膜の厚みや質の改善が期待される場合がある
  • 反復着床不全で内膜の状態が課題とされる方に用いられることが多い

卵巣PRP(PRP卵巣注射)とは

  • 低卵巣予備能(AMHが低い)・早発卵巣不全などの方に対して、卵巣機能への作用を期待して行われることがある
  • 卵巣にPRPを直接注射し、卵胞の発育を促す可能性を期待するアプローチ
  • 研究・実践がまだ発展途上であり、効果や安全性に関するエビデンスは十分に確立されていない
⚠️ PRP療法は現時点で保険・先進医療の対象外です
PRP療法は先進医療ではなく自由診療として行われます。また、再生医療等安全性確保法に基づく手続きが必要な治療であり、実施できる施設は限られます。費用はクリニックによって大きく異なり、保険の高額療養費制度や自治体助成金の対象にもなりません。効果・安全性については現時点でエビデンスが十分に確立されていない部分もあり、担当医と十分に相談したうえで検討することが重要です。

④ PICSI(ヒアルロン酸を用いた精子選択)とは

🔬 PICSIのポイント
  • 成熟した精子はヒアルロン酸(卵子の周囲にも存在する物質)に結合する性質を持つ
  • PICSIではヒアルロン酸を塗布した専用プレートに精子を接触させ、結合した精子のみを顕微授精(ICSI)に使用する
  • ヒアルロン酸に結合できる精子はDNA損傷が少ない傾向があるとされ、より良好な精子を選別できる可能性がある
  • 主に男性不妊・精子の質に課題がある場合や、反復着床不全・反復流産などの際に検討されることが多い

IMSIとの違い

精子の選別技術として、PICSIと似た目的を持つ「IMSI(強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術)」もあります。

項目 PICSI IMSI
選別の方法 ヒアルロン酸への結合性 強拡大顕微鏡による形態観察
先進医療 ✅ あり ✅ あり
主な対象 精子DNA損傷が懸念される場合 精子の形態に問題がある場合

先進医療としての位置づけ

厚労省の先進医療名は「ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術」です。届け出を行ったクリニックでは、技術料のみを自費で支払い、その他の治療は保険適用のまま受けられます。

⑤ 3つの比較表

項目 タイムラプス PRP療法 PICSI
目的 受精卵の連続観察による胚評価精度の向上 子宮内膜や卵巣機能への作用が期待されることがある 精子の選別精度の向上
対象 体外受精・顕微授精全般 薄い子宮内膜・低卵巣予備能など 顕微授精(ICSI)を行う場合
先進医療 ✅ あり ✕ なし(自由診療) ✅ あり
保険との
組み合わせ
〇 技術料のみ自費 ✕ 全額自費 〇 技術料のみ自費
技術料目安 約5〜7万円 約10〜30万円
(クリニックにより差大)
約2〜5万円
エビデンス 複数の施設で実績あり 発展途上・施設間でばらつきあり 複数の施設で実績あり

※費用はクリニックによって異なります。2026年5月時点の情報です。

⑥ どんな人に向いているか

⏱ タイムラプスが検討されやすいケース
  • 体外受精・顕微授精を行う方全般(多くの保険対応クリニックで選択可能)
  • 過去に胚の質が課題となった経験がある
  • 複数の胚から移植する胚をより精度高く選びたい
💉 PRP療法が検討されやすいケース
  • 子宮内膜が薄く、移植しても着床しにくいとされた場合(子宮内膜PRP)
  • AMHが非常に低い・早発卵巣不全など卵巣機能が低下している場合(卵巣PRP)
  • 他の方法で改善が見られず、担当医と相談のうえ選択肢として検討する場合
🔬 PICSIが検討されやすいケース
  • 顕微授精(ICSI)を行う予定で、精子のDNA損傷が懸念される場合
  • 反復着床不全・反復流産で、精子の質が一因として考えられる場合
  • 男性不妊を伴う治療で精子の選別精度をより高めたい場合
⚠️ これらのオプションは最初から全員に必要なものではありません
タイムラプス・PRP療法・PICSIはすべて、すべての方に最初から必要な治療ではありません。まずは標準的な治療を行い、結果や状況を踏まえて担当医と相談しながら追加するかどうかを判断することが基本です。費用・効果・適応を十分に確認してから選択しましょう。

⑦ 先進医療・費用まとめ(2026年5月時点)

治療名 先進医療の名称 技術料目安 自治体助成
タイムラプス タイムラプス撮像法による
受精卵・胚培養
約5〜7万円 対象の自治体あり
PRP療法 先進医療の承認なし
(自由診療)
約10〜30万円
(全額自費)
多くの場合対象外
PICSI ヒアルロン酸を用いた
生理学的精子選択術
約2〜5万円 対象の自治体あり

⑧ 注意点

  • タイムラプス・PICSIの先進医療は、届け出を行ったクリニックのみで保険との組み合わせが可能。届け出がないクリニックでは自由診療扱いになる場合がある
  • PRP療法はクリニックによって費用・方法・適応の基準が大きく異なるため、複数クリニックで確認するのも一つの方法
  • これらのオプションを追加しても、胚移植の結果には個人差があります。担当医と相談のうえ、納得して選択することが大切です
  • 自治体の先進医療助成金の対象になるかは、居住する自治体ごとに異なります。自治体助成金の調べ方も合わせてご確認ください

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✅ この記事のまとめ

  • タイムラプス:受精卵を取り出さず連続観察。先進医療あり。技術料約5〜7万円
  • PRP療法:自分の血液から作るPRPを子宮内膜・卵巣に注入。自由診療のみ(全額自費)。エビデンスは発展途上
  • PICSI:ヒアルロン酸に結合する成熟精子を選別してICSIに使用。先進医療あり。技術料約2〜5万円
  • タイムラプス・PICSIは先進医療届け出クリニックなら保険診療と組み合わせ可能
  • PRP療法は先進医療の対象外のため、受ける場合は費用・適応・効果を担当医と十分に確認する
  • いずれも体外受精・顕微授精との組み合わせが前提。最初から全員に必要なオプションではない